いやもちろんっ、痴漢はだめ!ぜったい!
このサラリーマンが私の足を触ったのも事実!

けれども!事を大きくさせたくない私の気持ちも分かって!



「良くないよ。澪は俺のだろ?こいつ、俺の許可無く澪に触った」
「いや私あんたのものじゃないですけど」

「チッ……こんなことが起きないように毎朝同じ電車に乗ってたのに。ごめん。あとでいくらでも俺のこと殴っていいから」
「殴りませんけど!?」



その瞬間、プシューッと音を立てながら扉が開いた。
サラリーマンが慌てて降りようとするのを、奴は見逃さない。



「なに?降りる?いいよ、一緒に降りようか。ちょっと顔貸してよ」



手首をぎゅっと力強く握りしめながら、冷たく笑う。
そんな奴に、私もサラリーマンも「ひっ」と声をもらした。