怖くて、瞼をきつく閉じていた。
真っ暗な視界の中で不良の言葉が不自然に途切れて、何かが潰れるような鈍い音も聞こえたから、
恐る恐る私は瞼を開けたんだ。
「──おい、おまえ、気安く澪に触ってんなよ」
私のすぐ後ろで、聞いたこともない榛名くんの低い声がして。
さっきまで私の目の前にいた不良は、いつの間にかコンクリートの上でのびていた。
「澪はもう俺のだよ。誰にもやらねぇ」
わ、私の後ろにいるのは、いったい誰?
榛名くん?
優等生で、皆から慕われている榛名くん?
「……ん?」
ゆっくりと顔を横に向けると、榛名くんと目が合った。
小さな笑みを浮かべて、首を傾げてる。
いつもの、榛名、くん……?

