私だって、最初はあいつのことをただの優等生だと思ってた。

誰にでも優しくて、先生からの信頼も厚くて。
だからこそ名前を聞かれた時は驚いたし、正直ドキッともしたよ。


でも、ある時を境に、"ヤバい人"だって思ったの。

あいつを怒らせたらとんでもないことになるって分かったから、周りに迷惑をかけないように、私が見張っておかなきゃって。

そういう気持ちになっちゃったの。






『──おい、おまえ、気安く澪に触ってんなよ』





数ヶ月まえの、まだ暑さの残る9月のことを思い浮かべる。
夏休みが明けて1週間が経った頃、あの夜の街での出来事を。