クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜

「チカ!」


キヤ君が飛ぶように駆け寄っていき、カベ君もそれに続く。


「もう大丈夫なのか!?」

「おう。なんともねー」

逢和君がいつもの極上スマイルでキヤ君に抱きつかれながら言って、不意にこっちを見た。



バチ。


視線が、ぶつかる。




「…」




逢和君の温和なタレ目は、なんの感情も教えてくれなくて

私は時間が止まったみたいに、動けなくなる。




「あーおー!!心配したよぉー!」


横から飛び込んできた小野田さんに、私たちのからまった視線は瞬時に解かれた。


「おい、くっつくなよ小野田」

「いいじゃんいいじゃん!減るもんじゃないし♡」


じくじくした気持ちが湧き上がるのを誤魔化すように、私は逢和君から視線を逸らして窓の外の真っ暗な曇り空を見る。

…わぁ。まるで私の心みたいだよ。

小野田さんのはしゃぐ声を聞きながらそんなことを思う。




『得体の知れない虫』



…せめて人間になりたい人生だった。

普通の人間の女の子だったら、私も小野田さんみたいに…

…は、できないか。




「逢和!見て見て!宿研で2人で撮った写真、超映えてない!?」

「あー、はは。いい感じじゃん。」

「ねーもっと心込めてよ~!」






…神様

意地悪な神様

どうして私と逢和君を同じクラスにしちゃったんですか?