トイレの入り口に着くと、小屋の裏から聞き覚えのある声がした。

あ、と思って私は顔を出し、


「…!」


すぐに引っ込めた。



「…不憫なやつ。」



そこには、木の柵に腕をのせて景色を眺める花乃ちゃん。



…と、



「じゃあ花乃がその不憫なやつ、慰めてよ。」


花乃ちゃんの髪をすくって伺いみる、カベ君。


…な、なんか、

何の話ししてるのかわからないけど

お、大人な雰囲気…!?


「…あんたわかってやってるでしょ」


花乃ちゃんは自分の髪を絡めとるカベ君の手をどけることもせず、
無表情で流し目をする。

「バレた?フフ、花乃のそういうとこ好きだよ。安心する。」

「あっそ。…まぁ私もあんたみたいなやつ、嫌いじゃないよ。」


…え?

えぇー!?

花乃ちゃん!

前にカベ君はないって断言してたけど

なんだかんだ言ってカベ君といい雰囲気じゃない…?

ていうか、もう付き合ってそうなくらいの雰囲気だよ!?


「あ…もうそろそろ戻ろうか」

「ん、だね」

「手繋いで戻る?」

「絶対に嫌」

「あはは」


甘い雰囲気の漂う会話をする二人にバレないようにそっとトイレの個室に入った。


花乃ちゃんってば!

聞いてないよ!花乃ちゃんてば!!


私は二人の会話に()てられて、一人真っ赤になった顔を覚まそうとパタパタと顔をあおいだ。