クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜

「……

なんちゃって。」



この時の逢和君の『なんちゃって』は、今日のお昼の『なんちゃって』に比べてずっとトーンが低くて、

とても『なんちゃって』には思えなくて。


硬直する私を見て、逢和君がフ、と口を曲げて優しく微笑んだ。

「…また明日な。寧々。」

逢和君は鞄を掴んで軽快な足取りで教室を出た。





教室の前の扉から廊下を覗いてみると、小走りする逢和君が小さく見えて、すぐ階段の方に姿を消してしまった。



「…行っちゃった。」



私はオレンジに染まる教室に戻る。

逢和君がいなくなっただけで、急に寂しい場所になってしまった。

さっきまで逢和君がいた窓枠に手をついて、教室後ろ扉の方に目を向けてみる。