「や……いや…」


動かない身体で必死に身じろいでも、まるで意味がない


誰か、助けてって思うけど

部活をしてる生徒しかいないような時間に誰かが通りがかるはずもなく

もし通りがかったとしても、鍵が閉まってるところをわざわざ開けようなんて誰も思わない




それでも


どこかで期待してしまってる


もう絶対に触れない、もう他の人の元へ行ってしまったあの人が助けに来てくれるのを


バカみたいに


期待してしまってる





「ッ…、」





枯れ果てたはずの涙が、目尻からこぼれ落ちた。








「(……逢和、くん……)」







声にもならないその声は、あてもなく宙に浮いた。

















ガチャンッ


「!」


隣の視聴覚室から、鍵を開けようとする音が聞こえる。



ガチャガチャッ、

…ドン!ドン!ッバン!!



視聴覚室の扉を無理やり開けたらしい音がして、足音がこちらに向かってくる。



「は…?なんで…なんでこっち来んの?」

私の下着に手をかけていた木村君が手を止めて、ドアの方に釘付けになる。







……ッバン!!






勢いよく視聴覚準備室のドアが開いた。






「ハァ、ハァ、ハァ、」






その人が汗だくで息を切らしている。






「…またお前かよ…」



木村君が呆れたような声で言った。








「…ッ、クシュン!」





それは2ヶ月ぶりの、くしゃみだった。