教室に着いて忘れ物を鞄にしまった『彼女』がトイレに行きたいと言って、俺はそのまま自分の席に座って待つ。

窓の外には青い青い空が、まだ夏の顔してこちらを覗いている。

俺は内ポケットに忍ばせた寧々のシャーペンを取り出して、物思いにふける。




……花火大会、プール、遊園地…

それから、お互いの家で勉強してみたり

あとは、ホラー映画とか…は、苦手そうだな。










やめた。

終わってしまった夏休みの妄想ほど切ないものはない。



シャーペンを内ポケットに戻し、本の続きでも読もうと引き出しを開けた。







「…!」







コロン、と現れた青いシャーペンに、

息を止めた。







「…」







震える手でそのシャーペンを手に取る。








寧々にあげた、

俺の分身。







「………寧々…?」






瞬時に

1時間ほど前に資料室の窓から見たカベと寧々の姿がよぎる。








…そっか。

とうとう、カベと…。