「ぎゅってしたら……あったかくて、嬉しくて、幸せで…すぐに仲直りだね。」






こんな風に逢和君とぎゅってできたら


どんなによかっただろう









もしアレルギーがなかったら




私と逢和君は隣の席で


宿泊研修も同じ班で


逢和君のカレーを食べて


部屋に行って一緒にトランプしたりできたのかな


ガラス越しじゃなくても


近づいて


手に触れて


本物の声を近くで聞けたのかな


悲しいとき


苦しいとき


嬉しいときや


ケンカしちゃった時も


こんな風にぎゅっと抱きしめて


逢和君のかわいい笑顔を近くで見れたのかな









「ふ…っ、う……うぅ……っ」








夏の間、ずっと我慢してた私の涙は

絶え間なく溢れて、溢れて、私のスカートをどんどん濡らしていく。







「ぎゅって、したかっ、たな……っ」







ねぇ逢和君


私は逢和君を、幸せにできないんだね







「おねえちゃん…」


私は流れる涙をそのままに、

一生懸命小さな手を伸ばして私の頭を撫でてくれる二人の手を取った。



「ありがとう…っ。二人のおかげで、決心、ついたよ…!」



私は二人に負けない、とびっきりの笑顔を向けた。



「私、頑張るね!」





頑張ってこの気持ち、

おしまいにするね。






程なくして双子ちゃんのお母さんが息を切らしてベビーカーを押して迎えに来て、

双子ちゃんとバイバイする。


右手におさまるシャーペンが、私の体温で熱くなっていた。



…返さなくちゃ。

逢和君に。



私は校舎に向かって足を踏み出した。