電車に揺られながら、ふと考えていた。



いつかの夢と少し違ってしまったけど、きっとこれで良かったんだ。






今日も会社に着いて、いつものように仕事をこなす。

まだ新入社員だけど、だいぶ仕事は慣れてきた。



そんなある日ーーー



トゥルルルルルーーー

何度もスマホが鳴った。



昼休憩で、かけ直した。



『あ!田中?久しぶり!
急ぎの用で何度も電話しちゃってごめん!』





電話の相手は、幼馴染の華だった。




「で、急ぎの用ってなに?」





『前に応募してたデモテープ覚えてる?』





あぁ…あれか。


それは1年ほど前、歌手を目指してた時にレコード会社に送っていたデモテープの話だった。





「覚えてるけど、それがどうかした?」





『あのデモテープが!巡り巡って、あのレコード会社の社長の目に止まって、今度生歌を聴かせてほしいって!!!!』




えぇぇぇえええええ!!!!!

驚きのあまり、声にならない。



ドクドクドクドク…
心臓の鼓動が速くなるのかわかった。




音楽の道は諦めて、社会人として今の会社に就職した。


だが…





『もちろん、唄うよね!?』



黙っていると、華から質問された。




「ちょ、ちょっと考えたい…」




『なんでよ!
田中の声、認めてもらえるかもしれないんだよ?!
ずっと夢だったじゃん!』




「で、でも…」




煮え切らない返事をしていると、


『歌います!って言っちゃったから、ちゃんと練習しといてよね!じゃ!』



プープープー…
一方的に電話を切られてしまった。




なんで…