またつまらない一日が始まる。
この世の中はつまらないことだらけだ。
でも、私はつまらないけど楽しいと思っている。それは、彼に会えるから。
「よっ。おはよ、桜」
「うん。おはよ」
何気ない会話の一つ。でもそれは、私にとって嬉しいことの一つ。
私は結構人見知りで友達もいない。
でも彼は、私を見てくれる。それが私の心の支えになっている。
ずっと好き。彼のことが。
それは、遡ること9年くらい前。
私の学校に彼が転校してきた。一目惚れだった。そんなにかっこいいわけでもないのに好きになってしまった。最初は、見てるだけでよかった。でも日にちが経つほど彼と話してみたいと思うようになっていった。でも、勇気が出なくてなかなか話しかけられなかった。そんな時彼から話しかけてきてくれた。
「君、桜って言うの?」
「うん。よろしく。祐樹君」
「あはは。よろしくって。転校してきてもう1ヵ月たってるよ」
「だって今まで一回も話したことなかったから」
「まぁな。いつも一人でいるから気になってたんだよ。皆話しかけに行くけど、うんともすんとも言わない。ただ首を振るだけ。でも楽しそうに皆んなといる。周りの皆も楽しそうに話す。それ見てて不思議だった。だから今日話しかけてみたって訳」
そう言ってニコッと笑った。
その笑顔がすごいキラキラしてた。
他のモテる男子よりもかっこよかった。
そして彼のことを今でも想っている。

ある日、私はゴミを捨てに行く時告白現場に会ってしまった。逃げようと思ったのに体がうまく動かず、そのままそこにいるしかなくなった。
「あの、私3組の水崎舞と言います。祐樹さんのことが私、この学校に入学した時から好きです。付き合ってください」
「ありがとう。俺でよければいいよ。よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします」
私は膝から崩れ落ちそうになった。
それでもなんとか耐え、ゴミを捨てた後、ダッシュで屋上に行った。
涙が枯れるまで泣いた。
泣き止んだ時には、もう日が傾いていた。
でも帰る気にはなれなかった。
もういいや。
そう思って寝転がっていると、ドアが開いた。
「ここにいたのかよ。おばさん探し回ってるぞ」
祐樹の声がした。どうせ幻聴だろうと無視していると。
「ちょっと無視すんなよ」
怒りかけた声が聞こえた。
「本当に祐樹?」
「あぁ。本物。他に何があるんだよ」
「幻覚」
それからちょっと沈黙の時間がきた。
「あのさ」
祐樹が話しかけてきた。
「早く帰りなよ。学校のメールでいろんな人のところに出回っているぞ。あと警察も動いているぞ」
私は空を見上げたまま言った。
「いいよ、出回ってたって動いてたって関係ない。私今日帰んない。ここにいたい気分なの」
「あっそう」
ーパン!
乾いた音が聞こえた。私が殴られたと気付くとなんか頬が痛くなった。
「ふっざけんなよ!何が帰らないだ!警察動いているんだぞ。おばさん必死に探し回っているんだぞ。自分の都合だけで動くなよ!」
私は頭に一気に血が昇って勢いのまま言った。
「何回言ったらわかるの?私は、帰らない。あんたに何言われようが帰らない。帰りたくないの。一人になりたいの。出てって。ここから出てって!」
そう言うと祐樹は何か言いたそうな口を開いたり閉じたりした後静かに出ていった。
また涙が溢れてきた。
全部自分が悪いのに。
自分がとった行動なのに。
気が済むまで泣いた後、さすがに帰らないとやばいかもと思って家に帰った。
帰ったら、お母さんにお説教された。
「心配したんだから!どこにいってたの!いろんな人に迷惑かけて!高校生なんだからいい加減にしなさい!」
「あぁ、もううるさいな!」
自分の部屋に入って鍵を閉めた。
ベットに入ったら一気に眠気が襲ってきて、すぐ寝た。
起きたら朝。
今まで以上につまらなくて苦しい一日が始まる。
世界が壊れれば、狂えばこんなことにならなかったのかな。周りの皆がいなくなればいいんだ。そうだ。あの女を殺せばいい。
お母さんが見ていないのを見計らってキッチンから包丁を取り出して鞄に入れた。
「行ってきます」
外に出ると、日差しが強かった。
いつも通り学校に行き、つまらない授業を受け、あいつを刺す。
実行するのは、今日の放課後。
それまで耐える。
祐樹があいつと居ても。付き合って1日でその関係は、終わるのだから。
静かに笑いが溢れた。
でもその日は実行できなかった。
祐樹が決めたことなのにそんなことしていいの?
それをずっと考えていた。

実行できたのは、1週間後だった。
放課後
私は舞を屋上に呼んだ。
「ちょっと、早くしてくんない?これからデートがあるんだけど」
「デートって祐樹と?」
「えぇ。そうよ。何か問題ある?」
勝ち誇った顔、声で言ってきた。
カッとなって私は隠し持っていた包丁を一気に振り上げて舞を刺そうとした。
しかし、刺す直前で刃が止まった。
そこから動けなかった。
「どうしたの?刺さないの?」
刺さなきゃ。刺さなきゃ。
そう思っていても上手く動かず、手から包丁が落ちた。
「あなたは、私を刺したいほど憎いのでしょ?だったら刺さなきゃ」
それでも私は動かなかった。
「そんなんだから祐樹が取られるのよ。勇気が無い弱虫女子が。それで祐樹取れると思ったら大間違いなのよ。この弱虫」
私は落とした包丁を持って舞の胸に刺した。
ードサ
立っていた舞は、倒れ動かなくなった。
包丁を引き抜き、返り血を浴びなかったからそのまま帰った。
これで私の復讐は終わったのよ。あとは祐樹を私のものにすればいい。どうやって私のものにしよう。そうだ祐樹も殺して私も死ねばいいんだ。
「フッ…フハハハハハハハ」

1週間後
私は祐樹を廃墟になった公園に呼んだ。
「なに?」
目の前の祐樹はやつれていた。
1週間でこんなになるんだってくらいに。
「ねぇ。舞さんのところに行きたくない?」
私は不敵に笑いながら言った。
「は?」
祐樹は、訳がわからないと言いたげな顔で聞いた。
「だから。舞さんのところに行きたくない?」
「どうやったら行けるんだ⁈」
祐樹が食いついてきた。
「うん。連れてってあげる」
そう言ってニコッと笑いながら片手で祐樹の首を掴み、空いている手で腹に包丁を刺した。
「これで舞のところに行ける。よかったね」
「お前なんかにやられてたまるか」
腹を抑えながら逃げようとする祐樹のアキレス腱を切った。
「ぐっ!うぁぁぁぁ」
地面に転がって痛み悶える祐樹を私はニコニコしながら見下ろしていた。
「ふざけんなよ」
睨んできた。
「ウフフ。大量出血で死ぬわね。痛いでしょ?辛いでしょ?大丈夫もう少しで楽になれるよ」
そう言いながら、私は腕にも刺した。
「んっ!うわぁぁぁぁ!」
「いいわねその痛がっている顔。最高だわ」
私は祐樹の隣に座った。
「どういうことだ」
「ん?」
「こんなことしてどういうことだって聞いているんだよ!」
額に汗を滲ませながら聞いてきた。
「復讐よ」
真顔で祐樹を睨みながら言った。
「復讐?」
「そうよ」
「なぜ?」
私は一呼吸置いてから言った。
「あなたが舞と付き合うからよ。知っている?私ずっとあなたのこと好きだった。でも、あなたは、舞を選んだ。祐樹。私はあなたのことが許せないの。だから刺した。ついでに舞のこと刺したの私」
「な…んだよ…それ」
息も絶え絶えに言ってきた。
「俺…小学生の時から…おまえのこと…好…きだよ」
「えっ?じゃあどうして舞と付き合ったの?」
目をうろうろさせたあと
「好きを…抑えきれなく…なってきたんだ。好きな人は…目立つことを嫌う…からち…がう人で…代用しようとしたんだよ…それなのに…なんで…おまえがこん…なことしてんだよ」
震えた手で私の頬を触った。そして耳元で
「大好きだ。桜。愛してる」
手が私の頬から滑り落ち、どんどん冷たくなっていった。
「祐樹…祐樹!そういうことは、早めに言うことだよ。言い逃げはダメだよ。ずるいよ。私…祐樹の笑顔が大好きなの。見ててほっとするの。もし私がこんなことしてなければ、一緒にいれたのかな。ごめん…ごめんなさい。祐樹」
そして私はなんの躊躇いもなく自分の胸に包丁を刺した。
私達は知らないけどその後私が殺したということが発覚して、探して見つけたけど本人は死んでるから、何も出来ない。
最終的に親が罰金を祐樹と舞の両親に払うということで終わったらしい。