きみと違う人と恋のまねごとをしてるんだ。
あまりに本当の自分と乖離したごっこ遊び。
いや、きみを思い出しながら違う人と時間を過ごすあたり、わがまま加減はちっとも変ってないかもしれない。
「ほんと?ちょっと欲張りかなって自信なかった」
「どうして?」
「だって琴美ちゃんと恋人にもなってないのに。僕のことで頭の中いっぱいにしててほしいなんて、ちょっとわがままかなって」
たしかに。
「きみ」にはなかったわがままだな。
ああ、こんなところまで比較してしまうなんて。
きみが残した傷跡は、自分で思うより大きかった。
私はきみがいない現実を受け止め切れてなかったのかな。
こうして今ようやく、失恋できているのかもしれない。


