* * *
本当に、そうだと思う。
そう。
きみは驚くほど簡単に私の当たり前になってしまった。
そして、驚くほど簡単に私の掌から零れ落ちてしまった。
きみという存在が、特別でなくなってもちっとも抜けきらないのは、きみの残した傷跡が消えてくれないからだ。
もう何回入力したかわからないほど入力した数字。
意図せずとも使ってしまう数字になってしまったそれは、何気なく見えて深刻な傷跡だ。
「琴美ちゃん、その数字よく使ってるよね。なんの数字?」
「んー」
「好きな芸能人の誕生日とか?」
「まあ、そんなところ」


