溺れる遺伝子

「わぁあああああああ!!!!」

一人の子が地面を転がる。頭を強く打ったようだ。
そしてその前には顔を真っ赤にしたヒナがいた。


「何してるの!?」

「ヒナちゃんが殴った…ヒナちゃんが…」

「稲森さん!?」


「……」

「稲森さん!!!!」


職員の言葉も聞こえないのか、ヒナは死んだような目をしてただ立っている。


今まで優しかったはずのヒナは、もういなかった。

子供達は、暴力をふるうヒナのことを、「ヒナの殻をかぶった別人」と信じようとした。

実際、そのようなものだったのだが…。