溺れる遺伝子

ヒナは、変わってしまった。

小さい子には優しかったのに、いまや挨拶も返さない。
食事の時間さえも一人で黙りこみ、ただ空を見ていた。


鳥が空を飛んでいる。


目の前に、いつか殺した公園の金魚が見える。
腐乱した猫の死体が見える。

その白く濁った目が、迫ってくるような気がして、ヒナは身震いした。


ぶくぶくぶくぶく…
…ぶくぶくぶくぶく


近くにはメダカの水槽と、メダカの卵。

昨日までは、ただかわいいだけだったメダカ…
メダカの赤ちゃんが生まれるのだって楽しみだった


…はずなのに…



次に気がついたときには



水槽は倒され、メダカは踏み潰され、卵は力なく割れていた。