溺れる遺伝子

ツバサのにおい…

ツバサの鼓動…


抱きしめられるたびに、あたたかい何かに包み込まれるようで…

しあわせで…


「…私はここにいていいんだな…」

って、思える。

人のぬくもりって本当に不思議で……。


ツバサには言ったことないけど、ツバサに抱きしめられるたび、安心して…なんだか眠くなるんだ。

丁度、子供が母親に抱きしめてもらって安心して眠くなるように……。


…多分……

ツバサに抱きしめられながら、私はお母さんに抱きしめてほしかった幼い自分に戻っている。

お母さんに抱きしめてほしくて、…認めてもらいたくて必死だった過去の私。

なのにお母さんは私じゃなくて、もう出て行ってしまったお父さんのことばかりを想って泣いて泣いて…

私の存在なんて…疎まれるだけだった…。