溺れる遺伝子

『私にはやっぱりツバサが必要なの…
ツバサじゃなきゃいけないの…』


夢の中で女の人がつぶやいていた言葉が頭の中によみがえってきた。


実際、そうなんだろうか…?

あんだけ…命を粗末にするようなこという男が…
はたして私が本当に必要とする男なのだろうか…。


だけど頭で難しく考えるよりも心が先にツバサを求め出していた。


ツバサ……

ツバサ……

ツバサ……。


丁度その時また着信があった。

そして中毒者が薬物を見つけたような素早さでヒナは携帯電話を手に取り、ふるえる指で通話ボタンを押したのだった。