「あなた、ちょっとこっちに来てもらえるかしら?」

 そう言うと、わたしは囲まれたまま、中庭のすみに連れていかれた。
 廊下や教室の窓から、死角になる場所だ。

 これって、もしかして、秋ちゃんや美来ちゃんが言っていた、蒼くんのファンクラブ?

 わたしは、一気に血の気がひいた。



 校舎の壁を背にして、逃げ場のないわたしの前に、ひとりの少女が立った。

「あなた、自分が蒼くんの彼女だって言いふらしているそうね」

 胸の前で腕を組み、わたしを睨みながらそう言ったのは、可愛いというよりも、とても美人な女の子だ。
 目つきは鋭いけれど整った顔立ちで、手入れの行き届いた長い髪は、みごとな縦ロール。

 わたし、縦ロールの髪ってはじめて見た!