秋ちゃんが心配そうに「大丈夫? 迷わない?」って言ってくれた。

 けれど。
 まだ食べている秋ちゃんをわずらわせたら申しわけないとばかりに「大丈夫、帰巣本能があるから!」なんて。
 わたしは冗談を言って教室を出たら。

 自分がこんなに、ものすごい方向音痴だったなんて。

 ああ!
 全然笑えない!

「どうしよう。一番近いお手洗いが混んでいたから、別のところに行こうかなって探し歩いていただけなのに……。教室に、たどりつけない……」

 見知らぬ学校の廊下なんて。
 同じような風景ばっかり!

 わたしは、半泣きになりながら、渡り廊下の手すりに寄りかかった。
 そのまま、中庭へ視線を向ける。

 そのとき――歌が聴こえた。