わたしは、言葉がでなくて、両手で顔をおおう。
 静かな蒼くんの声を聞いているだけで、涙があふれてくる。

「ぼくはきみの気をひこうと一生懸命になっているのに、きみは無意識に、全身で彼の気配や言動を探っているんだ。彼のことを気にしているんだ。そんなきみのことを、ぼくはあの手この手で振り向かせようとしたんだけれど、やっぱりだめだったんだな」

 蒼くんの声は、これまでにないほど、やさしい。
 わたしは、涙がとまらなくて、顔をあげられない。

「美来にも叱られたよ。もうやめる。きみをあきらめる。でも、これだけは信じてほしい。本当にぼくは、きみのことが好きだったんだ」


「本当に、きみが好きだったんだ」