二階の部屋に戻ったわたしは、そのままベッドに横になる。
 手には、猫のキーホルダー。

 いつも不愛想で、怖いイメージしかないのに。
 顔を赤らめた大神くん。

 誰も知らないであろう彼の表情を、自分だけがみている。
 このドキドキ感は、なんだろう?
 ふたりだけの秘密?

 でも、それなら蒼くんとも、歌についての秘密を持っている。
 なのに?
 これはもしかして、背徳感?
 蒼くんに罪悪感を持っちゃったから?
 でも、そんな言葉で、この想いを表現したくない……。


 あの歌が、聴きたい。

 歌を聴いたら、きっとわたし、迷わないのに。
 はじめて、歌を耳にしたときの気持ちがよみがえるのに。

 ねえ、あの歌を、歌って。

 わたしにもう一度、聴かせて。