わたしの誕生日は、11月1日だ。
 誰にもきかれていないから教えていない、わたしの誕生日。
 なのに、10月の終わりに、蒼くんにきかれた。

「ねえ、菜花ちゃんの誕生日って、いつなの?」
「え~っと。ら、来月の、1日……」
「え? そろそろじゃないか! これは盛大にお祝いを」
「やめて~」

 わたしと蒼くんは、家までの5分ほどの距離を、笑いあいながら歩く。

 体育祭の、なんとも言いようがない雰囲気は、あの日だけ。
 次の日には、もとどおり。

 陽気に笑うカッコイイ蒼くんと、まだ照れがあって真正面から見つめられないわたしの――おままごとのような、お付き合い関係。

「それだったら、せめてプレゼントだな。なにがいいかな? やっぱりアクセサリーかな?」

 蒼くんから、プレゼントをもらうなんて。

 ああ、でも。
 もしプレゼントをもらえるのなら。
 蒼くんに、あのラブソングを歌ってほしいかも……。
 なんて希望を口にするのは、欲張りかな……。