菫菜(スミレ)のように無邪気な恋は存在するのか?貴方は永遠にこのまま無邪気で居て欲しい。歳月は人を待たず、それでもあなたが好き。

かけがえのないあなたを待っている---

地球の隅っこに存在するナサーズ帝国。王室と貴族と言う身分から遠く離れた田舎に住んでゴロータ・エマには秘密があるのだ。その秘密はある事件に関係あるのだ。

この事件は王室や貴族であろうと、庶民であろうと関係なくナサーズ帝国の国民ならばきっと耳にしたことがあるはずだが......

「この事件は帝都伝説なのか?」

「これは実在したことなのか?」

「きっと天地開闢(てんちかいびゃく)をしナサーズを造った神が人間の世界に降臨したんだよ」

人々の言い方が異なるのはもちろんだが、なんだが変な言い方になっていく。どうしてそうなったのか、誰も分からない。少なくとも誰かが事件に対する世論を操っているのだ。

操られている世論によって一部の国民たちは『信じたがるもの』を信じる、そこで人によるがプライドと偏見を混じり込んで信じたものを決定的瞬間だと思い込んでから、これを『真実』だと信じるのだ。

しかし、『真実』を分かっていてもあの子は現在どうなっているのか、何処にいるのか、誰も分からない。本当のただ一つの真実は誰も気にしようとしないし、知る人は誰もいない。

それはそうだ。人はこのように自分と関係のない人は気にしないのだ。たとえ、相手は死後に魂は天国か、地獄かでも。しかし、いつまでも世論に気を取られる輩もいる。濁った世論に対し、自分こそが正義と主張するものも、批判を煽るものも、平和と繁栄の時代であるように願うものもいる。

エマ・ゴロータはどう見ても世論の渦巻きには立たない人だ。別に財閥の令嬢でもない、上流階級の名門家の当主でもない。姿も普通の田舎の農家の子である。

エマの暮らしは帝都の貴族の豪邸の暮らしに比べると両者はとても程遠いが、田舎では少し良い暮らしをしている。しかし、エマは家族のために奉公することに決めた。順調に奉公先が決まり、夢を見てながら田舎から帝都に旅に立つ日がやってきた。

「エマ、気をつけね、変な連中を見かけた途端にすぐに逃げるのよ」と母親のマリアは言う。

「心配しないで私は強いから、大丈夫」とエマは言う。

「これ奉公先までの旅費、大事にするのよ」とマリアは言う。

エマは旅費が入った巾着袋を開けた、中に三十万ビーがある、「多すぎるよ」とエマは言う。

「これからエマと離ればなれになるから、受け取って欲しい」とマリアは言う。

「ありがとう」とエマは言う。

「気をつけていってらっしゃい」とマリアは言う。

「ありがとう、お母さんもお大事に」とエマは言う。

エマは歩き出した、駅まで遠いのだ。
徒歩の代わりに乗り物があればいいなと思ったエマは首を横に振った、ダメだ、旅費はもらったばかりなのに大事にしないと、エマは歩きながら悩んでいる。

その時に少し遠いがエマの目の前に現れたのは干し草を運ぶ馬荷車だ。
「おーい、エマ!もう帝都に向かうのか」と叔父であるレオは言う。

「そうだよ」とエマは言う。

「ちょうど干し草をおろしたところなんだよ、駅まで送るよ」とレオは言う。

「ありがとう」とエマは言いながら馬荷車に乗った。

「帝都は厳しいところだよ、北にまだ前国王が育った軍隊が残っている、夢を見るのも良いけどさ、気をつけろよ」とレオは言う。

エマは荷車で寝落ちした。
目覚めた時は既に駅に着いていた。

「目覚めたか、着いたぞ」とレオは言う。

「ありがとうございます、こ...これ」とエマは言いながら巾着袋の紐を解いていた。

「金はいいから、さっさと列車に乗れ、遅れるぞ、エマは歩みたい人生を歩むんだよ」とレオは言う。

「はい!ありがとうございます」とエマは言う。

煙草を口に咥えているレオは笑顔で手を振った。エマは改札中でレオに手を振った。

エマは列車に乗ってすぐ拡声器から放送が流れた、「間もなく発車します」
エマは庶民の車両に乗っている。窓辺に座っているから暖かい日差しで眠くなりそうだ。大事な旅費を守ろうとして睡魔と戦っているエマの前に見知らぬ男の子が座っていた。

見知らぬ男の子の姿がぼやっと見える、真夏にチョコミントのアイスを食べたかのようにエマは目覚めた。

「こんにちは、お前も帝都に向かうのか?」と見知らぬ男の子は言う。

「そうよ」とエマは大人の口調で言う。

「俺も帝都に向かうんだ」と男の子は言う。

「そうなんだね」とエマは言う。
エマの本音は、ゔっせえ。

「俺は北に向かうんだ」と男の子は言う。
またエマの本音は、知るかボケ。しかし、男の子から北に行く話しを聞くと、エマは声をかけた、「北にはまだ軍隊がいる」

「知ってるさ、やりたいことがあるんだ」と見知らぬ男の子は言う。

「へー、そう」とエマは言う。

「ところでさあ......」男の子は話の途中に別の男に金が入った巾着袋をひったくりされた、「おい!俺の旅費、返せ」

エマは余計なことを言わずに逃げようとしたひったくり男の背中を蹴った。ドアの前に飛びかかって行ったひったくり男の背中を拳で何度か強く殴った。エマの拳は自身で言った通りに強い、農作物の世話しているから日々拳を鍛えてられているのだ。

「お前!強いな」と男の子は言う。

「そこを気にかけてよ」とエマは言う。

「何を?」と男の子は言う。

「もういい、これ取り返してやったよ」とエマは言う。

「ありがとう、やっぱり強いな」と男の子は言う。

「うるさい」とエマは言う。

エマの言葉が切ると同時に車両の奥から車内警察が出てきた、「何事だ!?」
床に転がっているひったくり男はひったくりで何度も署に出入りしているのだ。
車内警察はひったくり男を逮捕した。

手錠をかけてた瞬間に拡声器で車内放送された、「ていーとー駅、帝都駅です」

エマと男の子は無事に列車から降りた。エマは去ろうとした時に男の子は言った、「お前、名前は?」

「帝都へ行く人さ、あなたは?」とエマは言う。

「俺は、旅人、また何処かで会いましょう、ありがとうなあ」と男の子は言う。
男の子はきっとエマの体からのお茶の香りを忘れられないだろう。男の子は逆方向の改札口に向かった。

帝都に着いたばかりのエマは改札口での人混みが苦手と言うよりも、怖かった。母親からもらった奉公先までの旅費は十分に足りている。母親に育てられたエマは母親の恩を気にかけていた。へそくりを貯めていたのだ。

実際、エマも食べたいものは食べたいし、母親の目線で見るとエマはまだ子どもである、そう、エマまだ十五歳なのだ。子どもにも自尊心や物事の達成感を感じる気持ちはあるのだ。母親もへそくりのことを知っているが、子どもの気持ちを込めていたへそくりに対して知らないふりをした。
だから旅費は多くあげたのだ。

エマは改札を出た後に隣の売店で念願のチョコとコーラを購入した。チョコとコーラは田舎には無かったのだ。一度食べたかった。この国では、貴族と庶民のものは二つのメーカーで分けられているのだ。エマが買ったのは庶民のものである。

チョコレートを一口食べた。舌は味蕾と絡み付く絶妙な甘さに浸かっている。コーラも飲んだ、喉奥は爽快に弾ける強い炭酸、その醍醐味はまさに甘みと強烈な清涼である。味の余韻に浸っているエマは初めて豪邸へ行きの馬車に乗った。

馬車の外側の縁は念入りに作られた金に包まれて、金に模様が彫られている。屋根の角は馬車用のランタンが付けられてあるのだ。車体の両脇に四つの窓があり、左右のドアにも大きい窓が付けれてある。

馬車中の屋根の縁やドアの縁とドアノブも金色になっているのだ。大きくて淡藤色のボタン留めソファーにエマが座っている。使用人を迎えるとしては良い過ぎる馬車だ。エマの奉公先はかなりの豪邸に違いないのだ。

エマは馬車の窓の外の景色に気が取られているのだ。窓から鮮やかな洋服と人が行き交う道が見えてエマの目が回った。良く街を見渡せば、店が街を埋め尽くされ、田舎町とは全く別の世界。エマにとっては初めて衝撃的な興奮なのだ。

奉公先に着いた時は既に午後。
門番は見上げる程の重々しい黒い門扉を開けた。森ではないかと思う程の庭がエマの目の前に現れた。敷地内は池、遊歩道が整備され、小鳥の囀る声、植物や珍しい生き物まで揃えている。郷里に戻ったではないかと勘違いするくらいの景色である。

エマは庭園で迷子になりそうだ。長々の遊歩道に歩いているエマは庭園の花に気をとられて、しゃがんで花を見ている時にお嬢のような人から声をかけられた、「どちら様?何をしていらっしゃるですか?」

エマはお嬢様のような人の声を聞いて気が戻った。「はい!お初にお目にかかります。新しく入りましたゴロータ・エマです。宜しくお願いします」とエマは言葉を切ると同時にお嬢のような人に一礼をした。

「こんにちは」とお嬢のような人は言う。お嬢のような人は庭園で菫菜を鑑賞している、手に持ったのも紫色の菫菜だ。菫菜の妖精と思う程に美しく、紫の美にふさわしい人だ。

エマはお嬢のような人が持っている花を見ている。お嬢のような人もそれを見ている。それからお互い見つめあった、瞳にお互いの姿が映っている。二人はの視線はぶつかり合いながら甘く絡み、瞳の甘い感触は周りの庭園を透明にした。

良い雰囲気だ。まさに愛おしさが衝突しているの一目惚れである。菫菜は思慕(しぼ)と懐かしいものとして、少女の花と呼ばれ、ナサーズ帝国の国花でもある。

エマは前から侍女長にもらった懐中時計を手にした。「あ!いけない!侍女長との約束の時間が過ぎちゃいそう!すみません、お先に失礼します」とエマは言う。エマは遊歩道に沿って走り去った。

本館の扉に辿り着き、扉の前に待っていた侍女長は扉を開けた。エマの瞳に映ったのは家の真中に黒い紋路がある大きいな白い大理石階段だ。階段の踊場から左右に二階へ通る階段が更に造られてあり、広い玄関から二階までは吹き抜けである。全体が北欧風な造りである。

エマは天井に飾ってあるシャンデリアに圧倒された、正直に言うとこれはどこからが家なのかエマは変な考えを持っていた。無音という音すら聞こえない程の静けさを感じた時に侍女長の声が耳に届いた。

「二度目にエマとお会いできて嬉しいです」と侍女長は言う。

「私も侍女長とお会いできて嬉しいです、本日から宜しくお願いします」とエマは言う。

「こちらこそ宜しくお願いします、部屋へ案内します」と侍女長は言う。

「かしこまりました、侍女長!宜しくお願いします」とエマは言う。

「ニーナと呼んでくださいね」と侍女長は言う。

「はい、ニーナさん」とエマは微笑みながら言う。

侍女長は先にエマの荷物を置かせる為にエマを使用人の寝室に案内した。寝室は大きく清潔なベットとタンスがある。寝室を見たエマは私一人だけが贅沢になるのはいいことですか?エマは家族に申し訳ない気持ちが湧き自分に問いかけたのだ。しかし、どんな仕事でも行き先が決まったエマは安堵した。

田舎の母親から聞いた話では豪邸に住いの年上のお嬢様の相手を務めるのが主な仕事である。侍女長はこれからエマが使用人になる為の勉強の部屋とお仕事で出入りする主な部屋を案内したのだ。侍女長によっての案内の後は既に夕陽が沈む頃である。

風呂上がりのエマは寝室のベットで寝転がっている。家族と郷里の人々に失望させないようにエマは明日の仕事の為の気合いを入れたところ、侍女長はエマの寝室のドアをノックした。エマはドアを開け、明日の朝以降は留守と言う事での伝言があった。夕陽は夜の暗さに変わり、地上が厚い闇に包まれ、暗い中に遊歩道に沿って設置されいたガス灯が灯されていた。

エマの郷里の夜の道は真っ暗なのだ。初めてガス灯を見て衝撃であった。星が瞬く音も聞こえそう程の静寂の中に郷里の家族との思い出が走馬燈のように記憶から溢れ出てくる。いつの間にか寝落ちたも分からず、目覚めた時は既に朝陽の光が庭の木を染めている。侍女長は再びエマの部屋のドアをノックした。

「おはようございます。大浴場に行きましょう」と侍女長は言う。

毎朝、使用人たちは屋敷内の使用人専用の大浴場で入浴するのだ。エマは初めて本格の温泉に入った。田舎ではドラム缶に水を入れ、薪を燃やして風に吹かれながら風呂していたのだ。ナサーズ帝国では温泉自体は朝に入るもの、これはイングランドからの文化であるが、イングランドは風呂を朝に入るのだ。庶民から貴族や王までの日常習慣だ、ナサーズ帝国は温泉を持つ人が多のだ。特に貴族。

ナサーズ帝国の財産はマスクとベゾスを合わせたよりも非常に多く「他国の王や億万長者も夢を見るしかない」ほどの贅沢な生活を送っている。お金と権力の力を示し、二つを合わせて庶民たちが想像できない世界を作り上げた。このような大金持ちの国は王宮も、各貴族の豪邸にも温泉がある。

さすがに秘境にありそうな温泉は豪邸で造れないが、貴族ならそのような温泉に行けるのだ。そう、ナサーズ帝国は和ノ帝国のように温泉大国なのだ。熱い湯に浸かり、ドラム缶の風呂とは全然違った感覚になったエマは心地よくゆっくりとしている。

農作物の世話をしたせいで髪の毛も、顔も日焼けになった。小顔に大きな目はいつもきらきらと輝いている。純朴で大自然で育った子である。エマの小麦色の肌は輝くみえる、体はまるで花の蕾のように咲きそうなのだ。肉付きの良いすっきりした足。エマの体は自然にほのかなお茶の香りがする。

綺麗である。風呂が終えて、エマは使用人の服に着替えようとする。身分は同じく使用人であるとは言え、大浴場での着替えの恥ずかしさでエマはの頬に目立つ赤みが浮かび上がった。午前のメイド服である、紺色のワンピース、プリント生地の外側にレースのついた白いエプロン。そして黒い靴。

「エマ、ここに座って。時間ないから髪だけは手伝うよ」と既に着替え終わった侍女長は言う。

エマは椅子に座った。
二人は鏡を通してお互いの顔が見える。
エマとニーナ。

ニーナはエマの顔を見て、ある思い出の中に落ちた。エマの後に立つニーナは両手をエマの左右の肩に掛けた。ニーナの頭が微かに横を向いき頭を下げ、エマの耳元で軽くある一言を言った。

「あることは残酷ですが、幸せでもある」

この言葉の意味が理解できないエマの頭がぼんやりしている。エマがぼんやりしているうちに髪はニーナに整理された。髪を整えた後にエマは白い帽子をかぶった。ニーナは更衣室の扉を開け、廊下の世界と交じり合う。

エマは廊下に出て見渡した。室内灯は綺麗に細工をしたものであった。壁に飾ってある高価な絵、アンティーク家具、美味しそうなケーキとモーニングティーに綺麗な床、全てが清潔感に溢れている。侍女長はエマを御主人の部屋へ案内した。

侍女長はノックしてからドアを開ける、眩しい太陽の光を遮るカーテンが引かれた部屋。エマは驚いた。 昨日の庭園で会ったお嬢様らしい人が屋敷の御主人だったとは思ってもなかった。この屋敷の静寂に相応しい人。

「おはよう御座います、御主人様。新しい使用人をお連れしました。用件がございましたらお呼びください。失礼致します」侍女長はお辞儀して退室した。

屋敷の御主人は腰を掛けた革の椅子から立った。凛とした美しい姿勢、ゆっくりとした優雅な動きの女性にエマは目を疑った。紫のロングドレスを着ていた細い身体に絹のような白い肌、ロングヘアにパーマをしている。小顔に眉毛が前髪に隠されている。

ゆるやかな美しい目に長いまつ毛、左眼の下に黒いほくろがある。そして、小さい口。
可愛いフランス人形のようだが実は押しが強く、気性が少し荒い女性である。性格は午前のメイド服を着ているエマとは正反対だ。

御主人の儚(はかな)げな指先がエマの視界に入った。エマの頭を撫でた。

「お......おはよう御座います」とエマは赤面になった。

「あなた...」御主人は指でエマの顎を持ち上げ、目を見ながら言う。

「は.......はい」とエマは言う。

「名前は?」と御主人は言う。

「私はエマ・ゴロータと申します」とエマは言う。

「そうか、エマって良い名前だね。私の名はマーガレット・キャヴェンディッシュ。今日からエマは私の侍女。宜しく」と御主人は言う。


貴族でもない私が侍女なの?何かの間違いなのではないか?エマは思った。しかし、せっかくの仕事なので侍女でも下級雑用でも構わない、仕事さえあれば大丈夫とエマはそう思った。

「承知しました」とエマは言う。

マーガレットはエマの顎から指を下ろした、「私は後で王宮に向かうので、馬車の用意はしたか?」とマーガレットは言う。

「御主人様、侍女長が既に用意しておりました」とエマは言う。

エマの言葉を切ると同時にマーガレットは蝶の羽の如きの瞬きをした。沈黙な間にエマと瞳を逸らす事なく見つめ合い、どこから寂し気な感じをした。

「ありがとう」とマーガレットは言う。

「失礼致します」エマは礼をして退室した。廊下にいるエマは暫くすると、廊下の窓からマーガレットが馬車に乗る姿が見えた。

この日、留守と言っても実質は留守ではなかった。今度、エマの目の前に現れたのは家庭教師だ。王妃候補者や王太子候補者に侍るものに選ばれなかった人対しての行儀から乗馬や狩猟など幅広いレッスンがあるのだ。この家庭教師は貴族の予約が来年まで入っているベテラン鬼教師である。

「おはようございます!わたくしはバーバラ・アイルドと申します。今日は行儀教育を行います」とバーバラは言う。

「お...おはようございます。お初お目にかかります、わたくしは...」とエマは初めて鬼教師を見た、とても緊張しているのだ。

「声は優しく、笑顔で自己紹介はもう一度!」とバーバラは言う。

「はい!わたくしはゴロータ・エマと申します」とエマは言う。

「宜しいです。今から筆記レッスンを開始する、筆記用具の準備終えたか?」とバーバラは言う。

「はい!」とエマは言う。

「まずは、女使用人について説明する。貴族は幼少頃から王宮で行儀見習い係として奉公したことから上級使用人の始まり。その中から選ばれた人は王妃候補者の使用人であるが秘書に似たもの、レキナの称号を与えられてから奉公する。

レキナになるための実技や筆記試験も厳しく見られ、採点される。引退後のレキナは一番多いのは家族経営の会社を継承するが今は家庭教師になるものもいる。下位貴族が上位貴族に侍る女は侍女である。

料理師は資格取得が必要のため特別使用人である。それ以外は下級使用人であり、下級使用人は王宮からの指名があれば昇格できる。

特別使用人は万が一重大な罪を犯してしまった場合には貴族条例により資格を剥奪し下級使用人とする、または奉公禁止とする。

次は、男使用人の説明する、従僕を勤め上げた者が執事に昇格できる。万が一重大な罪を犯してしまった場合には貴族条例により奉公禁止とする」とバーバラは言う。

女下級使用人は昇格なしに等しいのだ。険しい道のりだなとメモしているエマは思った。ところどころに休憩を挟んでの四時間後......

「歩き方の練習をします。練習のうちに姿勢矯正しますのであちらの本と林檎を頭に乗せてください」とバーバラは言う。

「はい!」とエマは言う。

時が過ぎ、厳しいレッスンを終えた頃は既に午後である。早速、エマは使用人としての研修が始めた。漏れた美しいピアノのメロディが廊下にいたエマの耳に少し響いた。これはスコットランド民謡である「蛍の光」。

エマはドアをノックして王宮から帰って来たマーガレットの部屋に入り、蓄音機から切ないポエムのようなピアノのメロディが部屋に溶け込んでいた。

「こんにちは御主人様、アフタヌーンティーをお持ちしました、本日のお茶はゴロータファーム製の茶葉です」とエマは言う。

「嬉しい、ゴロータファームは評判が良い、茶農家として貴族の心を得ている」とマーガレットは言う。マーガレットはゴロータファーム製の茶葉がとても好むのだ。

「そうなのですね」とエマ言う。

一部の貴族は農家を認めていることはエマが知っている。貴族はせいぜい他人の良いものは、自分のものにしたがる、自分の良いものは自分のものであるとエマは思う。

「どうしてここに奉公に来たの?」マーガレットは言う。

「家族のためです」とエマは言う。

「そうなんだ、手紙の仕事に興味はある?」とマーガレットは言う。

「手紙ですか?興味あります!」とエマは言う。

「手紙類のお仕事は任せるよ、素早いエマがいれば私は助かる」とマーガレットは言う。

「はい、頑張ります」とエマは言う。

中等科で卒業したエマは自分が持った偏見に対し恥ずかしい気持ちが湧いた。御主人からお仕事を任されたエマは行儀レッスンを受けた後に図書室で中等科よりも難しい文字を勉強している。図書室は特別使用人を含め、侍女以上のものしか入れないのだ。

それ以下のものは図書室の外で朗読を盗み聞きを結構するのだ。本職をやりながら勉強を頑張る日々である。こんな日々が続いて一週間経ち、エマは他の一部の使用人たちに良い目されなかった。中にメアリー・プース夫人という女がいる。

メアリーは副侍女長である、嫉妬心が凄い人だ。まさにエマが持った偏見のような人だ。田舎から来た侍女であるエマに対して、メアリーはなかなか気分は晴れなくて廊下で暴走したのだ。手を上げて思い切りエマの頰に平打ちをした。

「私はどれだけの苦労で今の副侍女長になったのか分かる?え?田舎人なのに侍女だと?笑わせるな、こんなことをしてどうせ御主人に媚を売りたいでしょ」とメアリーは言う。

エマの頰はライターの火の気が当てられたように熱く、痛みが頭に貫いた。平打ちされて混乱したエマは信号みたいに顔色がコロコロ変わるメアリーを見て首を竦めている。

「副侍女長、この子は我々が教育します、落ち着いてください」メイドは副侍女長の右腕を止めた。

「冷静になさってください」家令の瀬波須智博(せばすともひろ)も副侍女長の左腕を止めた。

「あんたをめちゃくちゃにしてやる!こら!離せ!離せ!」メアリーの腕は抜け出そうとしている。屋敷の廊下の突き当たりはT字路になっているのだ。ある壁の後ろにいたワルーア・シャロットは一部始終を目にした。

尊敬すべき人に自ら頭を下げ部下になる。これはワルーアの座右の銘である。主にも、同僚にも、部下にも心には明確の判断を付けている。マーガレット・キャヴェンディッシュやニーナ・ディーバーロと瀬波須智博は尊敬すべき人である。

しかし、廊下の事を目にしたワルーアはエマにそんな価値がないと思っている。エマは田舎出身だからではなく、ただの人間としてなのだ。なにせよ、自分の尊厳と身の安全を守れないような人はそういった価値はない。

時間を無駄にして彼女を軽蔑や侮蔑するのも必要がないし、屋敷で下級使用人は裏で上級使用人のエマを嘲笑している所を見たとしても、知らないふりをするのが常である。重要でない人に対しては私情を挟まず原則性に従うのがワルーアという人である。人に優しくするのは人間として、いや、むしろ執事のリテラシーである。

ワルーアはドアをノックして、マーガレットの部屋に入った、「お嬢、ご命令した通りにエマを見張っていますが、周りは相変わらずです。今日で副メイド長が暴走していました」とワルーアは言う。

「ありがとう」とマーガレットは言う。

「失礼致します」ワルーアはお辞儀して退室した。

この世の全ての理や価値観と人、または気持ちが共通している、ある意味で共通していない、これもまた人生の醍醐味の一部とマーガレットは今日でメアリーが暴走したと聞いてそれを一瞬でそれを思った。

マーガレットは明日に王宮への馬車の用意の予定を立て、大事な手紙を書いた。