「バカになんかしてないよー。かわいいなぁって思っただけー」
「……っ」
ほんと、ムカつく。サングラスを外して、そんなにほっこりした顔をすんな。
「んじゃね、王河くん。ちゃんと乃愛ちゃんとお友達に謝るんだよ~。で、乃愛ちゃんに、大大大好きっ!って伝えるんだよ~~~」
「……って、大きなお世話だ」
あーもー! だから嫌だったんだよ、煌河の車に乗ることは!
俺と乃愛とのことが筒抜けじゃん!
ったくおまえ、医者より別の職業の方が向いてんじゃねーの?
本当は、兄貴が医者としても優秀だっていうことは知っているけど、こうでも思わなきゃおさまらない。
つか、野々山っ!
おまえのせいだからな、こんなことになったのは、全部。
いつも俺にケンカ腰で絡んできやがって。
なんの恨みがあるっていうんだよ。
今度学校で会ったら、マジで許さねーからな。覚えてろよ。
ドラマの撮影現場付近に俺を降ろして走り去った煌河の車を見ながら、俺は心の中で悪態をついた。