“ごめん、乃愛。後でかけ直すから”
そんな言い訳を心の中でして、通話を拒否するためにボタンを押そうとした。
でもその前に……。
「王河くん、早く出てあげれば~? 乃愛ちゃんからのモーニングコールなんでしょ~?」
と茶化したような煌河の声が聞こえた。
「その乃愛ちゃんの写真、めっちゃくちゃかわいいよね~。あとから俺にも送ってよ~。それって、この前ウチでしたBBQのときの写真だよね~?」
「…………」
マジかよ、コイツ、いつの間に見たんだよ。
ハンドルを握って前を見てただろ、確実に。
イラッとした瞬間、操作を誤って画面をスライドしてしまった。
“ヤベッ”と思いながら、右耳にスマホをあてる。
俺は左利きだからいつもは左耳にあてることが多いのだけど、今は俺の左側で運転している煌河に聞かれたくない一心で右耳にあてた。
「あー、乃愛どうした?」
チラッと左側の煌河を見ながら口早に聞く。
サングラス越しでもわかる煌河のにやついた目元が、すごくムカつく。
いつもならうれしくて仕方がない乃愛からの電話なのに、今に限っては早く終わらせたくて仕方がない。