……かと思ったら、

『……は? バーカ!! 金輪際、乃愛には近づくな。この変態っ! チカンっ!!』

 とスマホに向かってMAXの音量で叫んでから、夏帆はスマホをなっちゃんの手にバシンと渡した。

 それを受け取り、なっちゃんは、

『藤城くん、見損なったよ! もう二度と、乃愛ちゃんの彼氏面なんかしないでね。溺愛もお断りだし、近づかないでっ!』

 ケンカ腰にそう言って、ブチッと電話を切った。

「あー、ムカつく! 乃愛、あんなヤツとは、もう一生口をきくなっ!」

 腕を組んだ夏帆が、プンッと横を向いている。

 え?夏帆? 今の王河との会話、いったい、どんなやりとりだったの!?

 興奮した夏帆の声はとても大きかったけど、いつも冷静な王河は声を荒立てたりしないから、全然声が聞こえなかったよ。

 なっちゃんはただ自分の気持ちを言っただけだから、王河と会話をしていた風でもないし……。

 だから内容を夏帆に聞こうとしたけど、ブスッとした顔の夏帆は、

「あんなヤツ。存在すら忘れちまえっ!」

 と叫んでぷぅーっと頬を膨らませるばかりで、王河との会話の内容を、少しも教えてくれようとはしなかった。

 でも夏帆があんなに怒るってことは……。

 王河、きっと、あたしのこと……キライとか、付き合うつもりはないとか、そんな風に言ったんだ。