フルーツゼリーの残りを食べ終えると、乃愛はデスクだけじゃなくてバッグの中からも、教科書やノート、電子辞書などを持ってきた。
ウチの高校は本当に宿題の量が多い。
ちょっとうんざりしながら、乃愛が積み上げた教科書とノートを横目で見る。
乃愛はテーブルの上に、数学の教科書とノートを開いている。
もちろん、ふたりで見られるように教科書を置いてくれたけど……。
俺は左手でラグをポンポンと2回叩いた。
『乃愛は、ここ』
『え?』
『俺の隣。じゃなきゃ、勉強がしにくいだろ』
そう言ったけど、もちろん理由は、それだけじゃない。
勉強にかこつけて、少しでも乃愛の近くにいたいから。
ほんと俺って乃愛が好きだな、と苦笑がこぼれる。
『……っ』
という言葉にならない声に、乃愛の戸惑いをひしひしと感じる。
でも、考える時間はあげたくない。
すぐさま、またラグをポンポンと2回叩く。
『乃愛、早く』
それでも乃愛は俺の隣に来ない。
あーあ、切ないなぁ。