『王河……。あたし……王河のことが好き』
ふわっと優しく抱きしめる腕の中で、真っ赤な顔をした乃愛が俺を見つめる。
その告白になんて答えようか、俺は乃愛の家に来てからのことを思い返した。
俺の名前は、藤城王河。
私立南ヶ丘高校の1年生で、モデルと俳優の仕事もしている。
今日7月15日火曜日は、幼なじみの櫻川乃愛の16歳の誕生日。
一緒にお祝いをしたいと考えていたけど、今日は午前中からドラマの撮影があって遅くなりそうだったから、乃愛とは約束ができなかった。
でも予定よりも早く撮影が終わり、急いで乃愛の家に向かうことにした。
驚かせたいから、乃愛には連絡をしていない。
急に俺が来たら、乃愛はどんな顔をするんだろう?
会うのは久しぶりだし、少しは喜んでくれるかな?
はやる気持ちを抑えて、乃愛の家のチャイムに手を伸ばす。
そのとき、指先が震えていることに気が付いた。
やばい、俺、めちゃくちゃ緊張している。