それなのに、そんな大事なことを、さっきまですっかり忘れていた。
『王河ぁ。なにしてるの~?』
浴衣に身を包んだ乃愛が、家族から少し離れてしゃがんでいる俺に近づいてきた。
『ん?俺たちの将来を埋めてるの』
確かそんな、むずがゆくなるようなセリフを、真顔で口にしたと思う。
『俺たちの将来ってなぁに~?お菓子~?』
乃愛がしゃがんで、俺の手元をのぞきこむ。
『あー。今は、見ちゃダメ』
『えぇ~?なんでぇ~?』
不満そうに唇を尖らす乃愛。
『10年後、あげるから。それまで待ってて』
『えぇ~?やだぁ。今すぐちょうだいっ』
小さな手をさしだす乃愛。

