都合のいいことを考えて、早鐘のように打つ心臓のあたりの、洋服をギュッと握りしめた。

 乃愛の返事を待つのが怖い。

 数秒が数年にも感じられる。

 これ、ある意味、拷問だろ。

 俺が悪かった、もう勘弁して。

 そう思った瞬間、乃愛は俺を見あげて、口早に言った。

「王河が女の子に囲まれていて、イヤだったのっ!」

「……へっ?」

 想像していた答えと全然違って、いい意味で、拍子抜けする。

「なんだよ、それ……」

 一気に緊張が解けて、くにゃくにゃっと脱力する。

 俺は、その場にしゃがみこんだ。

 その状態のまま、ハットを右手で押さえたとき、乃愛は言った。

「王河がモテるのも、女の子に囲まれるのも、昔っからだし、いつものこと。だからこんなのは、王河が王河でいる限り、ずっとずっと続くってわかってるけど」

「わかってるけど?」

 立ち上がりながら乃愛に問いかける。