ぼんやりと、駅前の雑踏に目を向ける。

 楽しそうな笑顔。

 浴衣を着た女の子のグループが、特にはしゃいでいる。

 なんか久しぶりだな、こんな風に乃愛を待つのは。

 考えてみれば、俺、最近は乃愛のことを待たせてばかりだったから。

 乃愛との時間を、これからは、もっとたくさん作りたい。

 そんなことを考えていたとき、突然声をかけられた。

「あのっ……。おひとりですかぁ!?」

 浴衣を着た、女の子のグループ。

 やべ、見つかったか?

 若干焦りながら、下を向く。

「いや。連れを待ってるんで」

「え~?お友達ですかぁ!?じゃあ、じゃあ。そのお友達が来たら、あたし達と一緒に花火を見ませんか~!?」