「ありがと、乃愛」
そう言った王河が、パタパタ扇いでいたあたしの右手をつかんで引き寄せた。
「お、王河っ」
急に引っ張られたせいで、王河の胸に飛び込むような形になった。
「ご、ごめんねっ」
すぐに体を離そうとしたけど、その前に、王河にふわっとゆるく抱きしめられた。
「逃げんなよ、乃愛」
「……っ」
いや、あの、そんなことを言われても。
ここは学校だし、恥ずかしすぎる。
それに、みんなはHRの最中なんだよ。
そんな中で王河にぎゅってされるとか。
そんなのドキドキして困るよぉ。
それに王河、さっき言ってた大事な用事は大丈夫なのかな?
HRにも授業にも出られないくらい時間がない中で、それでも今日学校に来たのは、その大事な用事のためなんでしょ?
それなのに、こんなところであたしなんかといてもいいのかなぁ?
王河の胸の中でモジモジしながら考える。
「あの、王河……」
「ん?」

