「乃愛は俺のって……」

 王河が言った言葉に、みんながびっくりを通り越して、あっけにとられたような顔をした。

 なんでだろう?

 あれは、“乃愛は俺の幼なじみ”の略なのに。

 そう言おうと口を開きかけたとき、

「学校でそんなに堂々と……。藤城くん、芸能人だろ? そういうのってヤバいんじゃないの?」

 と森くんが遠慮がちに王河に聞いた。

「あ、王河でいいよ。俺も森って呼ぶし。で、質問の答えとしては、そうだな、乃愛なら大丈夫って感じかな」

「……マジか、すごい覚悟」

 と森くんがちょっと引き気味の声を出したとき、

「ってことで、じゃあまた」

 と言った王河は、あたしの手を引っ張りながら歩き出した。

「ねぇ、王河。今日はどのくらい授業に出られるの?」

 王河と一緒に授業を受けられるのがうれしくて、知らず知らず笑顔になってしまう。

 朝ウチで、『王河、今日は学校に行けるの?』って聞いたあたしに、『まぁ、少しだけだけど』って王河は言ってた。

 だから……、

「午前中の授業までとか? それとも、ランチも一緒に行けちゃう感じ?」

 そうなったら、ものすごくうれしいのになぁ。