「誘ってくれたのはD組の森くんと同じクラスの清水くんだよ。別荘は森くんのおウチのだって」
「そっか。じゃあまずはD組の森からだな」
そう言って王河は、あたしの手を離すことなく学校の中に入った。
「え?王河、学校の中ではさすがに手はもう……」
「言っただろ? “乃愛は俺の”だって。だから手も離さない。つーか、離したくない」
弱気なあたしと強気な王河の視線がぶつかった。
その瞬間、
「朝から手をつないで登校とか、藤城、アンタなに考えてんの?」
って言う夏帆の声が後ろから聞こえた。
「あ、夏帆、おはよう」
って振り返って言ったあたしの声と、
「野々山には関係ないだろ」
っていう、あたしよりも大きな王河の声が重なった。
その数秒後、
「……は? 野々山って誰のこと?」
と夏帆は、腕を組んで不機嫌そうにつぶやいた。