だって昨日、夏帆が電話を切ったあと、あたしが王河に電話をかけ直してもつながらなかったし、あのあと王河からかかってくることもなかった。

 だから王河は、あたしが誰と旅行に行くとか、そんなことには興味がないと思っていた。

 それなのに……。

「聞いてんだろ? 乃愛、うやむやにしようとすんな!」

「え?」

 鋭い声を放ち、急に王河が立ち止まったから、あたしはちょっとつんのめった。

「うやむやにって、そんなつもりは……」

「あー、もういいから早く教えろよ。俺、その2人に話したいことがあるからさ」

 王河は普段からは想像もできないようなぶっきらぼうさで言って、横を向いた。

「え?話したいことってなに?」

 王河って……、同じクラスの清水くんはともかく、森くんと知り合いだっけ?

「あー、もう乃愛、きょとんとすんな。話の内容は、そいつらに会ったとき、乃愛にも教えてやるから」

「う、ん」

 いまいち納得がいかなかったけど、早く言えよと言わんばかりに、王河が強い視線を向けてきたからビビってしまって、思わず早口で答えてしまった。