うつむいて唇をかみしめながら、お兄ちゃんの部屋をノックする。
あれ? 返事がないなぁ。
「お兄ちゃんっ」
今度は声を出して呼んでみた。
それでもお兄ちゃんからの返事はない。
まだ大学から帰ってきていないみたい。
ふぅ……。
お兄ちゃんの部屋の前の壁に寄りかかって、ため息をつく。
あたしはこんなにも王河のことが好きなのに、王河はあたしのことを、ただの幼なじみで、同じ高校に通うクラスメートとしか見てなかったんだ。
それがわかって、すごく悲しい。
髪を撫でてくれたのも、ふわっと優しく抱きしめてくれたのも、おでこをちょんちょんっとつついてくれたのも全部、あたしが王河の幼なじみだから。
今日会いに来てくれたのだって、あたしが王河と同じ高校に通うクラスメートで、宿題のことも勉強の進み具合も知っていたから。
ただ、それだけなんだ。
それなのに、“王河と幼なじみ以上になりたい”とか、“王河もちょっとくらいは、あたしのことが好きなのかなぁ?”とか、そんな恥ずかしい期待や勘違いをしちゃったよ。
でもよくよく考えてみれば、王河と幼なじみっていうだけで、あたしにとっては、宝くじに当たったみたいな奇跡。

