7月17日木曜日の朝。

 俺は朝早くに乃愛の家に来た。

 しかも朝6時とか、非常識以外のなにものでもない。

 でも、絶対に無理。

 なにがなんでも、乃愛が軽井沢に男と一緒に行くことを阻止しないと――。

 そう思って、乃愛の家のチャイムを押した。

 乃愛のお父さんとお母さんに、昨日野々山が電話で言っていた、あり得ない話をするために。

 誰が乃愛を男と一緒に泊まりの旅行に行かせるっつーんだよ。

 昨日野々山との電話が終わってから、俺は鼻息荒く、憤慨しながら即行電話をかけた。

 電話の先は、ウチの軽井沢の別荘の管理人さん。

 ウチは親所有で何か所か別荘を持っているけど、乃愛が軽井沢に行きたいなら、軽井沢には俺が連れて行く。

 だからそのために、俺のスケジュールと別荘の空いている日にちを確認した。

 そのあとすぐに乃愛の家に電話をして、乃愛のお母さんに話すこともできたけど、そうすることはしなかった。

 野々山との電話越しに、乃愛の『お母さんにダメって言われるかもしれないし』っていう小さな声が聞こえたから。

 乃愛が家に帰ってご両親に話をして、OKの許可が出ていたら、俺も一緒に行く約束をとりつけようと思った。

 反対にもしNGが出ていたら、夏休みだし、せめて俺との日帰り旅行を許してもらいたかった。