とぼとぼと廊下を隣のお兄ちゃんの部屋まで歩きながら、今聞いた王河の言葉を思い返す。
『乃愛に宿題を教えてもらって、一緒に勉強がしたい』
……そっかぁ。
今日王河がウチに来たわけは、“ただ宿題を教えてほしかったから”。
……それだけだったんだ。
約束もなしに急に来た王河にびっくりして、『えっ、なんで? 王河、突然どうしたのっ!?』って聞いたとき、
『べつに。ただ乃愛に会いたくなっただけ』って、あたしがドキドキするようなことを言っていたのに。
そんなことを王河に言われて、ものすごくきゅんってときめいたのに。
なんだぁ。そっかぁ。宿題かぁ。
王河の言葉を真に受けて、ドキドキした自分がバカみたい。
なぁにが、“だって、今、ものすごくいい雰囲気なんだもん”なんだろう?
勘違いがはなはだしい。
恥ずかしくて、穴があったら入りたい気分だよ。
さっき、告白なんてしなくて、本当によかった。
あのタイミングでお母さんが来てくれたことに感謝だよ。

