王河に迷惑をかけちゃった。どうしよう。
慌てて手で口元を隠して、下を向いた。
王河のファンの人たちを悲しませたらいけないし、なによりたくさんの人の視線が怖くて、バッグの肩ひもを握りしめた。
こうした視線や歓声は、王河といると昔から当たり前のことだったけど、王河が有名になるにつれて、とげのあるものも多くなった。
考えてみれば、確かにそう。
なんであたしみたいな平凡な子が王河と一緒にいるの?って思うよね。
ひとりひとりに”幼なじみ“なんです、許してください。
って言ってまわるわけにはいかないし……、だからあたしは早口で王河に言った。
「あたしっ、やっぱりひとりで学校に行くねっ」
王河の返事も聞かずに駆け足でその場を離れて、Mofu*Rinの定期入れをかざして改札をくぐった。
そのまま駆け足でホームまで行っちゃおうと思ったとき、
「……あの」
と、見知らぬ男の子に声をかけられた。
「名前を教えてもらってもいいですか?」
「え? あたしのですか?」
急に名前を聞かれてびっくりした。

