気づいたときには、「キャー、カッコいい~!」とか「本物、マジやば~い♡」とか、女子の視線が王河にくぎ付けで、ぴょんぴょん跳ねながら王河を指さして騒いでいるような状態だった。
「見て見て、藤城王河っ! カッコよすぎる~!!」
「うれしい~。イケメンすぎて、もう神レベルっ!」
……遅かった。もう藤城王河だって、バレてるよ。
「あー、変装なんかいらないって。だって俺、なにも悪いことしてないもん。ただ学校に行こうとしてるだけ。ねぇ?」
と、キャーキャー黄色い声で騒いでいる女の子たちに爽やかな笑顔で、王河は小さく手を振った。
「キャーッ! 藤城王河に手を振られちゃった~!」
「今っ、あたし達のことを見たよね?」
「笑顔も可愛いし、カッコいい~!」
キャーキャー騒いでいる女の子たちも、王河が普通にしているからか、次第に騒ぎもおさまってきた。
よかった。大ごとにならなくて。
ホッと胸をなでおろした瞬間、
「でも、隣の女子って誰? 藤城王河のなんだろう?」
ピリッと鋭い声が小さく聞こえた。
「だよね、あたしも思った」
ひそひそっと、あちらこちらで声が聞こえる。
あっ、どうしよう。
あたし自分の気持ちばっかりで、王河と並んで歩くとか、一緒に人前に出るとか、そんな初歩的なミスをしちゃったよ。

