「大丈夫、夢じゃない」
「……っ」
お、王河、どうしちゃったの!?
いつもはそんな甘いことを言わないのに。
……考えてみれば、あたしの誕生日にウチに来た時から、違った気がする。
でもあたし、あのとき、ちゃんとフラれたよね?
それなのに、王河はどうして、そんな……あたしがドキドキするようなことを言うんだろう?
あたしの気持ちを知ってるくせに、どうしてわざと……、あたしがドキドキするようなことをするんだろう?
王河の気持ちがわからなくて、ジッと王河の目を見つめる。
すると、フッと困ったような笑顔を浮かべて王河は、あたしの肩をサラッと引き寄せ、改札に向かった。
「これから、この人混みに突っ込んでくんだから、乃愛、絶対、俺から離れんなよ」
「え……っと。ちょっと待って、王河っ!」
「なに?」
「『なに?』じゃなくて。変装とかしなくていいの? メガネとかマスクとか。そうじゃないと、藤城王河がいるって、大騒ぎになっちゃうよ」
あたしは肩にあった王河の腕を振り払い、ぴょんと横に飛びのいた。
初めて王河と一緒に学校に行けるって浮かれていて忘れてた。
王河はあたしにとっては幼なじみだけど、他の人から見たら“芸能人“。

