そのせいか、腕と腕がふれそうになった。
「……っ」
ふたりとも、腕の振りが大きくなったから――。
でも、触れそうで触れないギリギリの距離。
王河のそばの右腕だけが、少し体温を高く感じる。
ものすごく近いのに、くっつくわけじゃない数センチ。
その距離がまたもどかしくて、なんかとっても甘酸っぱくて、あたしは唇をもにゅもにゅっと動かした。
王河と初めて一緒に登校する、くすぐったいような幸せな時間。
いつもは約10分の道のりを遠いなと思うのに、今朝はあっという間、ほんの一瞬でついてしまった。
うー、王河との2人の時間は、これでおしまいかぁ。残念。
しかも、これから満員電車だぁ。
テンション下がる……そう思ったとき、
「そういえば、今日初めて乃愛と一緒に登校するな」
そう言って立ち止まった王河は、あたしを見て優しく笑った。
「ヤバいな、ほんとうれしすぎる。夢じゃないかって思うくらい」
「……え?」
「これが現実かどうか、ちょっと乃愛のこと触らせて」
「……えぇっ!? 触っ!?」
驚くあたしの頭にそっと手を乗せ、王河は言った。

