「え?」
「乃愛、ボーッとしてるし。さっきまでより歩くの遅いし」
「あ、ごめんっ」
つい王河に見とれちゃって。
「乃愛が大丈夫なら、もう少し急ぎたいんだけど……。いい?」
「いいよ」
とは言ったけど、王河、なんで急ぎたいのかな?
いつもの時間よりも家を早く出ているし、これだとけっこう早く学校に着いちゃうよ。
そういえばさっきも『乃愛、今日は早く学校に行きたいし。もうそろそろ出かけない?』って言ってたし。
なにか用事でもあるのかな?
あたしは王河と並んで歩く駅までの道のりを、もっとゆっくり、大事に歩きたいんだけどなぁ。
だって、2人っきりの時間なんて、めちゃくちゃ貴重なんだもん。
でも、仕方ないかぁ。
王河、学校に来られる日があまりないしね。
だからきっと、早く学校に行きたくてうずうずしているんだね。
そんな王河、なんか、かわいいかも。
だったらあたしも協力しないと。
そう考えて、さっきまでよりもがんばって早く歩くことにした。

