「乃愛ちゃんと王河くんは、ほーんと、美男美女でお似合いね~。今日は一緒に学校に行くの? 仲がよくって、おばさん、うらやましいわぁ~」
竹内さんが、ほうきを持っていない片手を頬に手を当てた。
“び、美男美女“とか。”お似合い”とか。”仲がいいとか“そんなこと言われて、どう返事をしたらいいんだろう?
あたしは美女じゃないし、王河にはフラれているし、なんか一緒にいるのが恥ずかしくなってきちゃった。
一緒に学校に行くこと、王河に断ればよかったなぁと後悔したとき、
「そんなことないですけど……、ありがとうございます」
と、王河は謙遜してから、爽やかな声でお礼を言った。
「そんな風に言っていただけてうれしいです。でもおばさんの方が美人ですよ」
「え~、いやだ~。そ~お? 王河くんに言われたら、おばさんうれしくなっちゃうじゃな~い。じゃあ、気を付けて行ってらっしゃいね~」
満面の笑みの竹内さんに少しだけ頭を下げて、王河はスッと歩き出した。
そ、そつがない。
余韻まで爽やかってすごすぎる。
あたしなんて、なんて言っていいのかわからなくて無言で突っ立ってただけなのに。
さすが近所のおばさん達のアイドルだった王河だけのことはある。
いつもこんな風に対応してるんだぁ。
王河に尊敬のまなざしを向けたとき、
「どうかした?」
と王河がチラッとあたしを見おろした。

