「そうだね、王河くんになら、大事な乃愛を嫁に出してもいいくらいにおじさんは思ってるよ」
「お、お父さん、なに言ってるの!?」
「そうそう。王河くんなら、乃愛の結婚相手にぴったりね。乃愛のことを、とっても大事にしてくれそう。どう?王河くん。乃愛をもらってくれない?」
「お、お母さんもっ。なに言ってるの!? お、王河、困ってるよぉ。も、もう行こっ、王河っ」
恥ずかしくて王河の顔が見られなくて、制服のシャツの背中をちょこっと引っ張る。
「ごめんね、王河。変な家族でっ」
「全然変じゃないし、すごくあったかくていい家族だと思うけど」
お父さんとお母さんとお兄ちゃんに見送られながら、家を出て駅までの道のりを王河と並んで歩く。
そういえば、王河と一緒に学校に行くのは初めてかも。
なんだかドキドキするなぁ。
やっぱり王河、背が高いし、足も本当に長いなぁ。
歩幅だってもっと広いはずなのに、今はあたしの歩幅に合わせてゆっくりと、車道側を歩いてくれている。
うれしいな。なんだかとっても大事にされている気分。
「あら、乃愛ちゃん、王河くん、おはよう」
「「おはようございます」」
近所の竹内さんが、ほうきで家の前を掃き掃除しながら挨拶をしてくれた。

