不思議に思って王河を見ると、
「乃愛のお母さんには、乃愛に宿題を教えてもらって、一緒に勉強がしたいって言ったから。今日乃愛んちに来たわけを」
と言って王河は、ラグに座ったままニコッと笑った。
「まぁね。そのくせ俺は、教科書もノートも持ってきてないんだけど」
「あぁ……そんなの大丈夫だよ。き、教科書はあたしのを一緒に見ればいいし。あ、でもノートは……この前買った新しいのがあるけど、“Mofu*Rin”のだから……。
いくら女子高生に人気のキャラクターっていっても、王河が使うのはイヤだよね。あっ、だったらお兄ちゃんにもらえばいっか。あたし、もらってくるねっ」
トレイをテーブルに置きながら一方的にしゃべって、ドアが開いたままの部屋を飛び出し、バタンと勢いよく扉をしめた。
王河がなにか言った気がするけど、気がつかないフリをしちゃったよ。
だってあのまま、あの部屋にいられなかったんだもん。

