「いつからそんな子になったのかしら」
「え、お母さん、違うっ……」
昨日の夜お母さんに言わなかったのは、そもそも行くかどうかを迷っていたからで……。
そう言う前に、向こうのソファに座ったお兄ちゃんが、にこにこしながらからかってきた。
「乃愛は~。いつから親に隠し事をする悪い子になったんだ~?」
「もうお兄ちゃんまで。違うんだって!」
「なにが違うんだよ~。ダブルデートなんだろ~?」
「だから違うって言ってるじゃん!」
「乃愛は~、てっきり王河のことを好きなんだとばかり、お兄ちゃんは思ってたぞ~。でも違ったのかぁ~」
「おっ、お兄ちゃんっ!!!!!」
王河にはもうフラれてるって知らないお兄ちゃんは、朝からのんきに爆弾を落とした。
もう、お兄ちゃんっ! 朝からあたしの心の傷をえぐらないでっ。
王河にもバッチリ聞かれちゃったじゃん!
慌てたせいで、ナイフとフォークがお皿にあたって、カチャカチャと音をたてた。
「コホン」
仕切り直すかのようにひとつ咳払いをして、タブレットで読んでいた記事から顔をあげてお父さんが言った。
「まぁ、内緒で行くのはよくないが、せっかくの夏休みなんだ。乃愛、王河くんの案なら行ってもかまわないよ」

