「乃愛、遅いぞ? もう少ししたら、起こしに行こうと思ってたところだ」
……じゃあ、この声は、誰?
王河の声に似てるけど、まさかねぇ。
うーん。
誰だろうと思って、細ーく薄目を開けてみた。
なんか……エプロンしてる男の人?
お料理してるの?
でもウチにはお手伝いさんなんかいないしなぁ。
「まーだ寝ぼけてんのか? 乃愛」
きっと、こんな口の利き方もしない。
それに、この声は……やっぱり王河だっ!
びっくりして、目がバチッと開いた。
そうしたら本当に、オシャレなエプロンをつけた王河がウチのキッチンに立っていた。
「っ、えっ、王河っ!? なんでっ!? なんで朝からウチにいるのっ!?」
「んー?べつに。乃愛においしいフレンチトーストを食べさせたくなっただけ」
「え……」
なにその理由。
でもテーブルを見ると、お父さんもお母さんもお兄ちゃんもおいしそうなフレンチトーストを食べて、幸せそうな顔をしている。