『もしもし、乃愛? 今大丈夫?』

 スマホから聞こえる王河の声にドキドキする。

 いつもの声も好きだけど、電話の声もすごく好き。

 吐息まで聞こえて色っぽいし、なんだか王河を近くに感じられる。

 だからものすごくうれしいのに、切なさに胸がギュッと痛くなるのは、昨日フラれてしまったせい。

 でも王河に責任はないんだし、暗い声を聞かせるわけにはいかないから、精一杯元気で明るい声で返した。

「大丈夫だよ。それより王河ごめんね、今朝は」

『あーうん、べつに』

「シャツの話……だよね?」

『……は? シャツ?』

「え?違うの? 昨日ウチに忘れていったよね?」

 そう聞いたはずなのに、王河からの返事がない。

 ……あれ?なんで?

 そう思ったとたん、手からスマホがなくなっているのに気が付いた。

 えっ!? どこにいったの? あたしのスマホっ!

 びっくりしてキョロキョロすると、いつの間に本屋さんから出てきたのか、夏帆があたしのスマホを持って王河に話しかけていた。