「好きは、さ。やっぱり言ってこそだと思うんだ、あたしはね。勇気を出して告白した乃愛ちゃんをスルーするとか、どう見ても好きなくせに好きって素直に言わないとか、そんな藤城くんとのことは、応援できない。ごめんね、乃愛ちゃん。乃愛ちゃんの気持ちを知っているのに、こんなひどいことを言って」

 言い終わった後、なっちゃんは唇をギュッと強くかみしめて、いまにも泣きだしそうな顔であたしを見つめた。

 そんななっちゃんを前にして、“そもそも王河は、あたしのことを好きなんて、全く思ってないと思うよ。だからなっちゃん、今朝の話は気にしないで”なんて言うことができなかった。

 だってそのことは、今朝、夏帆にも同じように言われたばかりだから。

『好きなくせに素直に好きって言わない男より、ちゃんと素直に好きって言ってくれる男の方が、乃愛には合ってるんじゃない?
』って。

「そんな……なっちゃん。藤城くんだって、これから乃愛ちゃんに告白……」

 紗良ちゃんが小さな声で言ってくれたけど、その声を遮って、なっちゃんは、押し殺したような小さな声で淡々と言った。

「するわけないじゃん! 勝手にキスして、乃愛ちゃんからの告白にはスルーするような男だよ? 他の男子よりも圧倒的に有利なのに。幼なじみなんだし、近くにいるんだし、しようと思えばいつでも告白なんてできるのに。ましてや昨日は、告白されたんだよ。乃愛ちゃんが自分のことを好きだって、はっきりわかったんだよ。その状況で自分は告白しないとか卑怯だよ」

「そんな……卑怯とか、王河は全然そんなんじゃないのに」

 どうしてなっちゃんも夏帆も、あたしと王河のことをこんな風に誤解したりするんだろう?

 このあとなっちゃんも夏帆も黙ってしまったから、その理由が、あたしにはどうしてもわからなかった。